2013/09/10

客の民度という話

会社の近く徒歩圏内にはそこそこの飲食店がある。会社は最寄り駅に近く、そこそこの郊外なので、色々な店に足を運びやすい。

昼食という視点で飲食店を選ぶ際、価格や食事の美味しさという点が重視されると思ったものの、ここ一年くらい「客の民度」で選んでいる事が多いことが分かった。あとは、連続で同じものを食べないといった気分的な問題だけ。

会社の近くに、定食が安くて美味しい飲食店がある。名前は伏せるけど、ただここ一年くらい来店したことがない。何となく避けていた頃に、なんで考慮外にするんだろうと考えたら、それは「客の民度」が悪いからだということに気づいた。

その店は、昼間から必ずと言っていいほど酔っ払ったオッサンがいて、瓶ビールを横に大声で話をし、タバコを周囲の食事中の客への遠慮無く吸いまくる。店員側の対応を見ていてもそのオッサンは常連客らしく、特に疑問もなく会話をしている。酔っ払ったオッサンは何パターンかいるのだが、ほぼ必ずと言っていいほど酔っ払ったオッサンが先に来店しているか、私が来店しているときにやってくるというパターンが続いて、鬱陶しくなったというわけだ。

そのオッサンはどうして昼間から飲みあくれているのか。すぐに出てくる疑問ではあるが、スーツを着ているし羽振りが良いところで職無しという線は大体外れる。観察していると、どうやら店員側が「教授」とか「先生」と呼んでいるところ、また駅最寄りに総合病院があるところを見ると、このオッサンは夜勤明けの医師ではないかという説が出てくる。そういったオッサンが、昼間から酒を提供している数少ない店に通うという構図だ。

夜の店や居酒屋であれば通用するというか仕方が無いなと諦められる「民度」でも、昼間仕事の合間にホッと一息食事をする中でこれをやられると正直つらい。その店の昼の客入りはそこそこのようで、オッサンによる全体的な入店抑制効果は無いように見えるものの、私のようにそれに敬遠する客もいるだろうことを考えると、オッサンによる機会損失は結構あるんじゃないかなとすら思える。とはいえまぁ、昼間の営業は補助的なもので、収益の半分以上は夜の営業が占めているとも言える。ただ、店のイメージダウンになっていることは確かだろう。

自分も酒が入ってしまえば、酒が入った他の客の民度も気にならなくなる。自分の「民度」も下げて郷に入ってしまう作戦だ。居酒屋という文脈ならそれが妥当だ。タバコの煙が苦手な私も、酒が入っていればそれに鈍感になれる。夜ならそれができるが、昼間、しかも仕事の合間の昼休憩の時に酒を飲むわけにはいかない。結局は、民度の低い店に入って、民度の低いオッサンに店が「飲まれて」しまうと、せっかくの昼休憩が後味悪いものになってしまう。

結果、多少高くても遠くても、店が提供する何かではなく、店にいる客の民度が低くないかで店を選ぶという、ちょっと不思議な事になっている。しかし、それは昔からある話だった。

とある大物お笑い芸人は、自分のライブチケットの価格を1万円に設定した。1万円の価値が自分にあるという自負もあるだろうが、1万円も払ってやってくる客は自分への理解があるからという狙いがあったという。数千円であれば広い場所を借りてでも薄利多売ができるだろうが、そうすると冷やかし目的で来る客であったり、自分の芸風を理解しない客がやってきて、場の空気を盛り下げるという事なのだろう。まさに民度の話に近い。

私はクラシック音楽が好きで時々チケットを買ってコンサートホールに足を運ぶが、稀に隣の席の客がうるさかったり臭かったり、クラシック音楽のコンサートのマナーを守らない客だったりすることがあってガッカリすることがある。むしろ、コンサートの音楽の質に満足できずに不満を持つよりも、隣や近くの観客の民度の低さに不満を持つことのほうが圧倒的に多いのだ。

クラシック音楽のコンサートホールだけでなく飛行機でもそうだ。電話やネットでチケットを買う際、座席選びをするところで必ず思うのは、前の方であったり都合の良い席ではなく「隣の客を選ばせてくれ」という事。

キリスト教は「隣人を愛せよ」と言うものの、聖人でもないのでその境地に至るのは非常に難しいだろう。最近は老若男女がキレる世の中、行動を注意しても無駄なばかりか危険すら及ぶことさえある。むしろ「君子危うきに近寄らず」といった教訓で行動したほうがいい。そのために、隣人がどういう素性なのか、プライバシー保護全盛の世の中であるものの、自分の手中に収めたいという気持ちが湧いてくる。実際にやったらダメなわけだけれども。

住み始めて長いこの木造ボロアパートも、以前の隣人が深夜に連日大騒ぎをしたりしたなぁ。不動産会社もロクでもない審査より、木造ボロアパートのマナーをわきまえている民度の高い人間のみ、格安の木造ボロアパートに斡旋してほしいもの。

客の民度に限らず、近くの人への配慮を忘れてしまったら、その人や関係者はきっと結果的に孤立への道を歩むことになる。これは自戒を込めて思うこと。私も若い頃は若さ故にそういう迷惑を周囲にかけたこともあった。そういったことを忘れずに、今の私はあらゆる場所での「近くの人」への配慮を忘れないようにしようと感じました。

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